【地域解説:地中海世界】世界最大の内海を利用した交易によって文明が発展した地域について解説!

こんにちは!歴史ワールド管理人のふみこです!

今回は、世界史の地域区分の1つ、「地中海世界」について解説します。ヨーロッパ、アジア、アフリカの境界に位置する世界最大の内海「地中海」を囲む地域です。

「地中海世界」は、近世以降は「西ヨーロッパ」「東ヨーロッパ」「西アジア」に吸収され、現在は「地中海世界」という地域区分はありません。中世まで存在した地域区分です。

トロイア文明、クレタ文明、ミケーネ文明などの古代地中海世界文明から始まり、アテネやスパルタといった古代ギリシャ都市国家へと発展します。地中海を利用した交易が盛んに行われ、1世紀にはローマ帝国がこの地中海とその沿岸地域の全てを支配下に入れます。地中海世界の統一です。ローマ帝国の東西分割後、地中海世界は徐々に、西ヨーロッパ、東ヨーロッパ、西アジアへと吸収されていきます。しかし、中世でも地中海交易は盛んに行われ、16世紀の商業革命までは世界経済の中心は地中海でした。

この記事では、「地中海世界」の範囲、地理、気候、歴史について徹底的に解説します。

目次

地中海世界の範囲

上の図の紫色の範囲が「地中海世界」です。地中海を囲むように、イタリア、ギリシャ、トルコ、エジプト、スペインなどが含まれます。

地中海世界の地理

地中海世界は、地中海という巨大な内海を利用した交易によって文明が発展してきました。乾燥した気候のためオリーヴや果樹の栽培が盛んです。

地中海世界の気候

ケッペンの気候区分(出典:wikipedia)

地中海世界の大部分は温帯の地中海性気候(Csa、Csb)に属します。夏は乾燥して日差しが強く、冬に少し降水量が多くなります。1年を通して降水量は少なく、冬でも温暖な気候です。スペインとトルコの内陸部、エジプトやリビアは乾燥帯の砂漠気候(BWh、BWk)やステップ気候(BSk)に属します。南フランスの内陸部は西岸海洋性気候(Cfb)に属し、バルカン半島の内陸部は冷帯(亜寒帯)湿潤気候(Dfa、Dfb)に属します。

地中海世界の歴史

古代

紀元前3000年頃、クレタ島を中心にエーゲ文明が生まれます。これはオリエントの影響を受けた文明でした。エーゲ文明の初期はトロイア文明とクレタ文明が栄え、紀元前1600年頃からはギリシア本土のミケーネ文明が栄えます。ミケーネ文明は巨大な神殿や青銅器、線文字Bを作り、高度な文明でした。このミケーネ文明は紀元前1200年頃に海の民によって滅ぼされたとされています。

もともと中央アジアから南ロシアにかけての地域に住んでいたインド=ヨーロッパ語族のギリシア人は、紀元前2000年頃からギリシア本土に定住を始めます。

古代の地中海交易

紀元前8世紀頃から、ギリシア人とフェニキア人が海上に進出し、地中海各地に多くの植民市を建設して地中海交易を行います。ぶどう酒・オリーブなどの農作物、エジプトや黒海の小麦、オリエントからもたらされる金・銀・象牙などが地中海を通して盛んに交易されます。

ギリシアの都市国家は民主政を基盤とするポリス社会を築きます。紀元前5世紀にペルシア戦争でアケメネス朝ペルシアに勝利し、最盛期を迎えます。しかし、アテネとスパルタの対立から紀元前431〜404にペロポネソス戦争が起こってアテネが敗北すると、ギリシアの地中海支配は後退します。

ギリシア都市国家文明の最後は、マケドニアの勝利に終わります。マケドニアのアレクサンドロス大王がギリシアの全てを支配し、アケメネス朝ペルシアも倒してギリシアからオリエントにまたがる大帝国を建設します。ところが、大王の死後すぐに帝国は分裂します。その頃、ローマがイタリア半島を統一して台頭し始めます。

紀元前272年にイタリア半島を統一したローマはポエニ戦争でカルタゴを破り、ギリシアやエジプトも征服して紀元前30年に地中海世界を統一します。ローマは地中海の全ての沿岸地域を支配下に入れ、地中海はローマの海となりました。

ローマ帝国が西暦395年に東西に分裂し476年に西ローマ帝国が滅亡すると、ゲルマン人が西地中海各地に進出します。東ローマ帝国(ビザンツ帝国)のユスティニアヌス大帝が6世紀に一時的に西地中海の大部分を奪還しますが、徐々に勢力を後退させてギリシアとアナトリアのみの国となっていきます。

中世

7世紀に入るとアラビア半島に興ったイスラーム勢力がオリエント、北アフリカを征服してイベリア半島にまで進出し、地中海世界の半分以上を支配下に入れます。9世紀頃からはイスラームによる地中海交易が展開されていきます。

14世紀半ばの地中海交易

12世紀には北方からノルマン人が地中海に侵入し、シチリア島と南イタリアを支配するシチリア王国が成立します。イベリア半島ではキリスト教徒によるレコンキスタが進むなど争乱の時代となり、海賊も増えていきます。11世紀末からキリスト教徒による十字軍が始まると、その出港地となったイタリアのヴェネツィアとジェノヴァが台頭します。イタリア商人とイスラーム商人の取引による東方貿易(レヴァント貿易)が活発となり、地中海世界の商業活動が急速に発展します。

15世紀にると、オスマン帝国の拡大によって東方貿易は衰退します。さらに大航海時代が到来して大西洋の新航路による交易が活発になると、地中海交易は縮小して世界経済の中心は大西洋に移ります。その後は「地中海世界」というまとまりは消滅し、「西ヨーロッパ」「西アジア」にそれぞれ吸収されていきますが、その後も地中海は世界史の舞台であり続けています。

目次